風のない十字路

邦楽洋楽のアルバムレビューを主に書いてます。

TM NETWORK 『CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-』 - アルバムレビュー vol.131


1988年12月リリース

1. A Day In A Girl's Life(永遠の一瞬)
2. Carol(Carol's ThemeⅠ)
3. Chase In Labyrinth(闇のラビリンス)
4. Gia Corm FillippoDia(Devil's Carnival)
5. Come On Everybody
6. Beyond The Time(Expanded Version)
7. Seven Days War(Four Pieces Band Mix)
8. You're The Best
9. Winter Comes Around(冬の一日)
10. In The Forest(君の声が聞こえる)
11. Carol(Carol's ThemeⅡ)
12. Just One Victory(たったひとつの勝利)
13. Still Love Her(失われた風景)

 

祝!発売から30年!!!

TM NETWORKのJ-POP史上に残すべき名盤『CAROL』1988年12月9日に発売されて今年で
ちょうど30年。そして今日で記念すべき30年目の日。ということでこのブログでは初期の初期
であるアルバムレビュー第8回にて一度取り上げているのですが、今回は改めて全曲レビューを
して取り上げたいと思います。



1. A Day In A Girl's Life(永遠の一瞬)
各楽器が徐々に鳴り始めて、物語【CAROL】の始まりを告げる男のナレーションが入り、女性
コーラスも入り、そして宇都宮隆のボーカルが入る。ロンドンに住むキャロル・ミュー・ダグラス
という少女に突如起こった異変・・・という内容だが、小室哲哉の紡ぎだすメロディはどことなく
不安を抱かせるような趣だ。この曲で聞こえるエレキギターのカッティングはB'zの松本孝弘が演奏
している。木根尚登アコースティックギターに専念している。

2. Carol(Carol's ThemeⅠ)
前曲から途切れることなく続くメロディはキャロルのテーマ曲と続く。2分半弱の短い曲だが、
キャロルに今から起こる不思議な体験を予期させるような静かな音を奏でる。ピアノの音がとても
シンプルで綺麗に聴こえるのが美しく。エレキギターもなかなかにハードである。

3. Chase In Labyrinth(闇のラビリンス)
異世界に迷い込んだキャロルが迷っている情景が浮かぶ1曲。前2曲とは少し雰囲気が変わったのも
うなずける、作詞/小室みつ子、作曲/木根尚登という布陣に変わったがゆったりになるどころか
スピード感が増したアップテンポな展開になりシンセの音も印象的だ。

4. Gia Corm FillippoDia(Devil's Carnival)
妖しい怪物の声が冒頭聞こえ、まさに副題の通り悪魔たちの宴を表現しているかのような曲。キネバラ
で有名な木根さんが作ったとは思えないくらいアグレッシブな曲調で驚く。シンセベースを奏でる小室
さんも曲の雰囲気をよく捉えていて素晴らしい。

5. Come On Everybody
ここから何曲かはキャロルの物語からは外れてシングル曲が続く構成となる。なんとなく舞台の途中に
休憩が入る感じで気軽に聴ける。特にこの曲は当時のTMが得意としていたダンスミュージック系の1曲
であり、TM30周年イヤー時のライブでもアレンジされて演奏されていたほどの人気曲だ。

6. Beyond The Time(Expanded Version)
知る人ぞ知る映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の主題歌にもなったシングル曲でそのガンダム
世界観を(特に宇宙を想像させるサウンドワーク)如実に表した小室さんの手腕は見事の一言だろう。と、
まあ僕は一度もガンダム見たことないからわからないんですが(笑)
ファン人気もさることながらガンダムファンからも非常に人気の高い曲であるとのこと。

7. Seven Days War(Four Pieces Band Mix)
この曲も映画タイアップ付き、「僕らの七日間戦争」の主題歌である。例によって僕は見たことがない。
しかしいきなり「Revolution...」と囁くようなウツさんのボーカルから始まるこの曲はTMを代表する
バラード曲としても有名になった。10代の若者の青春を切り取ったようなみつ子さんの歌詞も一聴の価値
がある。ただ素直に生きるために...

8. You're The Best
なんとなくTMにしては珍しいタイプの元気づけソング。少しアルバム中では浮き気味かなとも思うが、
まあそこは気にしない。何年か前にNHK(BS)で放送されていた『MASTER TAPE』というアーティスト
の名盤が産まれた当時を紐解く番組でこの『CAROL』が取り上げられた回があったが(YouTubeにも
アップされている)この曲のコーラス録りが相当苦労したと語られていた。


9. Winter Comes Around(冬の一日)
キネバラの中でも最上位だと思うこの冬の名曲中の名曲である。歌詞中に「凍る街路樹」という単語が
あるように刺すような極寒の情景を映したこの曲は、ウツさんのボーカルが最高に映える。アルバムレビュー
第8回時にも書いてあったがレコーディング中にあまりのウツさんの神がかった声にスタッフが泣いてしまう
というエピソードがあるほどだ。楽器もピアノメインにストリングスのみで得意のコーラスも一切なし、と
いう徹底ぶり。とにかく素晴らしい。


10. In The Forest(君の声が聞こえる)
ここからは再びキャロルの物語に戻ってくる。イントロはなぜか寒さを感じさせる趣向だ。ギターは再び
TAKが演奏している。森の中を仲間を探して彷徨っているキャロルが疾走感たっぷりに聴かせてくれる。
2014年のアルバム『QUIT30』のDisc2では『CAROL』からの再録でこの曲が選ばれより華やかなアレンジ
で蘇りFanksを喜ばせた。

11. Carol(Carol's ThemeⅡ)
2曲目と同じメロを用いたキャロルのテーマその2。

12. Just One Victory(たったひとつの勝利)
アルバム発売後にシングルカットされた曲。キャロル達の勝利を高々に告げる力強いウツさんのボーカルが
魅力でライブでも定番の1曲になっていた。曲中盤には突如3曲目「Chase In Labyrinth」が挿入されており
ニヤリとさせられるこのあたりのアイデアは小室さんならではだろう。終盤も「just one victory now~♪」
と繰り返し繰り返しと出てきてアンセム感が増す。そして曲が終わったと思ったら、10曲目「In The Forest」
のインストバージョンが悲しげに流れるのが物語の終幕を思わせる。


13. Still Love Her(失われた風景)
屈指の大名曲。「シティーハンター2」のEDテーマとして「Get Wild」と共にシティーハンターファンの心
を30年以上掴んだまま離さないミディアムバラード。前曲のC/W曲として収録されているが知名度はこちらが
上だろう。過去の別れを後悔しながらも前を向いていかんとする男性を表現した歌詞はこのアルバム制作のた
めにロンドンに住んでいた小室さんによるもので歌詞にある「2階建てのバス」はロンドン特有の文化だ。
前述した番組『MASTER TAPE』の中ではこの曲のコーラス録りはスタッフ総勢で最後の最後に行われたと
語られていて、それを知ってこの曲の終盤のコーラスを聴くとジ~ンときてしまう。間奏の木根さんによる
ハーモニカのソロ部分は非常にハートフルで素晴らしい。

 



このレビューを書くにあたり2013年に発売されたBlu-spec2盤で聴いてみた。やはり何度何十回聴いても
素晴らしさは変わらずに音源がクリアになっていて迫力も増していてすごい。

1987年に「Get Wild」でブレイクしたTM NETWORKが同年にアルバム『SELF CONTROL
『humansystem』をリリースして大ヒットを飛ばして、期待が高まる中1988年になるとTMはリーダーの
小室さんはロンドンに移住し『CAROL』の制作の基盤をじっくりと作っていった。そしてウツさん、木根
さんはもちろん作詞の小室みつ子さんもそしてギタリストとしてサポートしていた松本さんもロンドンに長期
滞在しアルバムを作り上げていった。

そして苦労の末、できあがったアルバムは当時珍しかった明確なコンセプトのもと作られたコンセプトアルバム
として認知されその後、木根さんの執筆した小説「キャロル」やウツさんが声優として参加した
アニメ「キャロル」などのメディアミックスの走りとして今では当たり前の試みを行ったことでも有名に。

アルバム自体は彼らの最高の売り上げを記録しており当時のオリコンチャートでも1位を記録しており
知名度でもおそらく一番高いと思われます。

30年の時を経てもまったく輝きを失わない『CAROL』。今後もずっと聴いていきたい作品のひとつです。