風のない十字路

邦楽洋楽のアルバムレビューを主に書いてます。

ZARD 『君とのDistance』 - アルバムレビュー vol.126


2005年9月リリース

1.夏を待つセイル (帆) のように
2.サヨナラまでのディスタンス
3.かけがえのないもの
4.今日はゆっくり話そう
5.君とのふれあい
6.セパレート・ウェイズ
7.Last Good-bye
8.星のかがやきよ
9.月に願いを
10.あなたと共に生きてゆく
11.I can’t tell
12.good-night sweetheart
13.君と今日の事を一生忘れない


今年もこの日が来ました。そしてあれから10年も経ってしまいました。
年月が経つのは早いものです、僕はあの時25歳だったから。

ZARD坂井泉水さんが亡くなった2007年5月27日はショックで
よく覚えていません。ただただ現実感がなかった。5月という月はhide
清志郎さんも亡くなった月なのでなんというか寂しい月ですね。

今年レビューするのはZARD最後のオリジナルアルバムとなった
『君とのDistance』です。おそらく坂井さんがご健在であれば当然
これが最後の作品になるわけはなかったはずですが、悲しくも結果的に
遺作になりました。
 



1.夏を待つセイル(帆)のように
アルバム1曲目を飾るのは後期ZARDの名曲中の名曲であるこの曲。
劇場版「名探偵コナン 水平線上の陰謀(ストラテジー)」の主題歌としても
有名で劇中で活躍する小五郎のファンだという坂井さんのメッセージ映像も
記憶に新しい。壮大なイントロから優しい坂井さんの歌声が癒されるバラード。
作曲は大野愛果で後期のZARDには欠かせないメロディメーカーだ。

2.サヨナラまでのディスタンス
案外ハードテイストなロックナンバー。初期の雰囲気も少し匂わせる。
メロディはベタな90年代ぽさがあったりと、全体的に懐かしい気持ちになる。

3.かけがえのないもの
後期ZARDの名曲中の名曲(2回目)、パワーバラードで坂井さんのサビでの
歌唱はまさに「熱唱」といった感じで「GOOD DAY」に近い感じを受ける。
ギターソロはB'zのツアーサポメンの大賀氏のせいか松本さんのソロみたい
な雰囲気を感じてしまった。

4.今日はゆっくり話そう
僕は「月桂冠」のCMで流れている印象が強すぎて最初はそこまで好きには
なれなかったが(酒嫌いだし)アルバムに収まると素直な気持ちで聴ける。
素晴らしいコーラスを担当したのは大田紳一郎大野愛果上木彩矢
このころのシングルは売り上げは思わしくなかった。曲はとてもいいのに。

5.君とのふれあい
シンプルな演奏をバックに切々と歌い上げる穏やかなバラード。こういう
坂井さんの声が堪能できる曲はアルバムに入っていると名盤度が増す気がする。

6.セパレート・ウェイズ
思わずジャーニーのカバーか?などと反応してしまうのは洋楽ファンです。
ミディアムテンポな曲で地味だが、トランペットのソロが入るというのが珍しい。 

7.Last Good-bye
なんとここでFIELD OF VIEWに(このアルバムリリースから)10年前に提供した
ヒット曲をセルフカバーしたものを収録。wikiによると秋のリリースに合わせたかった
ようでなかなかセルフカバーしなかったという。

8.星のかがやきよ(両A面シングル。もう1曲は「夏を待つセイル(帆)のように」)
アニメ「名探偵コナン」のオープニング曲として使われた。僕はここまでアグレッシブで
BPMの早いZARDの曲は珍しいな、と思いかなりヘビロテしていた思い出がある。
シングル両A面としてリリースされたがまさに両方A面がふさわしい出来だと思う。
2番のサビ前の「低空飛行やめ エンジン全開で」という歌詞のところが大好きです。
後期ZARDの代表曲2曲だと思う。

9.月に願いを
ZARDとしては珍しくメジャー拍子でなくおそらく3拍子のリズムの曲でしかも
ワルツ風なテイストのアレンジがなされているのも面白い。(カノンぽさもあるか)
上品な雰囲気がとても良い。

10.あなたと共に生きてゆく
まさかのテレサ・テンさんのカバー曲。というか作詞は坂井さんで作曲は織田
哲郎のゴールデンコンビだ。だから正確にはセルフカバーになる。原曲のテレサさん
をイメージしてか二胡(中国の弦楽器)の演奏もよい味わいを出している。ラストサビ
の熱唱ぶりは凄みがある。

11.I can’t tell
なんとなくシングルのカップリングになりそうな感じのロックテイストな曲。作曲は
栗林誠一郎。切なさと激しさを感じる90年代のZARDぽさがある。 

12.good-night sweetheart
ビーイングおなじみの分厚いコーラスが印象に残る1曲。アップテンポで明るい
雰囲気がとても良い。坂井さんの楽しそうなレコーディング風景が想像できて
逆に泣けてきてしまう。

13.君と今日の事を一生忘れない
タイトルからしてもうグッときてしまう壮大なバラード。前曲同様にコーラスが
かなりすごいことになっている、しかし坂井さんの歌声もそれに負けじと頑張って
いるのが伝わってくる。歌詞からするにメガティブな感じも受けるものの
「少女のようにときめいている 宇宙の歌が聞こえる」という部分が希望を感じさせ
てくれる。サビ部にギターソロが入っていたりと曲構成も捻ってある。

 



ZARDの最後のオリジナルアルバムは名盤。基本バラードやゆったりめの曲が
多いが曲のクオリティは高くて捨て曲もない。後期ZARDを作曲面で支えた大野
愛果の貢献度は高い。90年代のZARDとはまた違う2000年代のZARDを作り
上げたスタッフの仕事は本当にお見事。

坂井さん本人も2000年代に入ってからは体調面で苦労したのだろうし、チャート
的にもピークを過ぎて下降していき、ZARDの名前も薄らいだような感覚も持った。
しかしこの最後のアルバムや前作『止まっていた時計が今動き出した』の素晴らしさ
は数字だけでは語れない熱量や勢いを感じる。だからこそ次のアルバムはまだかな
~と待っていたファンもスタッフや坂井さん本人も無念で仕方がなかった。

ジャケットでは珍しく遠目の坂井さんが写っているが、背景の色のせいで暖かみを
感じることができる。アップの坂井さんももちろん素敵だが、これもまた良い。

「星のかがやきよ」で聴くことのできるかなりアップテンポなZARDが好きだし。
「夏を待つセイル(帆)のように」での優しいZARDも素晴らしい。
ただ「かけがえのないもの」「あなたと共に生きてゆく」などで聴くことのできる
熱唱する坂井さん(の歌声)になにかこう鬼気迫るものを感じるのは気のせいか。

亡くなられて今日で10年、それでもZARDの数々の楽曲は無くなることはなく
聴き続けていくのだと思う。素晴らしい作品を残してくれた坂井さんに感謝です。